
去年11月、ポルシェセンターに愛車の718ケイマンを車検のために預けた際、代車としてポルシェ Taycan Turbo Sを借りました。
普段全く…本当に全く乗る機会がない超高性能超高級車を一週間体感…体験したのでそのレビューをしていきます。
尚、今回お借りしたタイカンは2020年から2024年2月まで販売していた先代型となります。
タイカンはポルシェの電動スポーツカー
タイカンはポルシェの初の完全自電気自動車。
そして今回お借りしたのは最上級モデルであるターボS。
ポルシェにおいてターボSと名付けられているモデルはトップエンドモデルの意味。
本来の意味である過給機のある/なしは関係ありません。
当然タイカンターボSにも過給機は付いていません。
完全100%ピュアEVです。
愛車のケイマン(ベースモデル)のパワーが300馬力ですが、一方タイカンターボSは最高出力460Kw(625馬力)、ローンチコントロール時のオーバーブースト出力は560Kw(761馬力)と驚異のパワー!!
ローンチコントロール時の最大トルクは1,050Nmあり、0 -100km/hは2.8秒という異次元の加速!!!
さすが電気自動車…。
でもポルシェが作った電気自動車であればそのパワーも見せかけだけではなくちゃんと使いこなせるパワーなのでしょう。
私にとっては愛車の718ケイマンでもかなり無理して養っている分不相応なクルマなのですが…
お借りしたタイカンターボSのカタログ新車価格は2609万円!
追加されたオプションを加えた価格は定かではないですが、全部込みの価格は3000万超えているかもしれません。
そんな超高級高性能車に私が…乗る…?乗っていいの…?
しかも一週間もっ!?
レンタル料金は一応払っていますが、5000円ですよ?
恐ろしい…とても恐ろしいですが、どうせならもう二度とこのようなクルマを乗る機会がないでしょうから貴重な経験ということで楽しみましょう。
一生自慢できるネタになりますし(苦笑)。
タイカンターボSのエクステリアとインテリアを見てみる
>エクステリア


私が借りた1週間は運が悪くずっと雨…。
きちんとした写真を撮る機会がなくとても残念。
タイカンのサイズは4.97m×1.97m×1.38m。
比較的大きな4ドアセダンですが、超高級クラスのセダンとしては特別大きなサイズではないでしょう。
間違いなくポルシェな見た目。
それなりにクルマの知識がある人ならタイカンは知らなくても一目でポルシェと分かる外観です。
大きなセダン形状ですが余計なキャラクターライン、余計なディテールがないのですっきりしておりポルシェらしい。
私はポルシェの所謂引き算のデザインが大好き。
リア下がりのルーフラインがとても美しいです。
最近のポルシェのアイコンに則り4灯ライトが付いていますが、タイカンは更に横長でデジタルな印象がありEVとしての個性がしっかり出ています。
涙目のようなスリットもブレーキに風を送るための機能的な形状。
でも私は涙目スリットはちょっと好みではないかも(苦笑)。
現行タイカンはこのスリットがヘッドライトに繋がっていないのでそちらの方が私は好き。
リアの横一文字のテールライトもすごく綺麗です。
最近の流行なのでポルシェ以外にも横一文字テールライトが採用されたりしますが、ポルシェはさすがに光量にムラがなく均一な非常に綺麗な光り方をします。
車体は大きく迫力がありますが無駄のない洗練されたディテールであるのに対し、足元はPCCB(ポルシェセラミックコンポジットブレーキ)の黄色いキャリパーの存在感が凄まじいです。
21インチの大きなタイヤに強力なブレーキ…電気自動車とはいえサーキットのバリバリ走れそうです。
あえて電気自動車らしいデザインは少ないタイカンですが、フロントフェンダー部にはelectricのエンブレムと充電ポートの存在がEVらしさを主張しています。
左に普通充電、反対側に急速充電のポートがあり黒い部分を指で撫でるとカバーは開きます。
一充電での最大走行可能距離は約400km。
私の家に充電環境がないので今回は充電はナシ。
ほぼ満充電状態でお借りしたのでそれがなくなるまでに返さなければなりません。
(ポルシェセンターの担当さんは充電がなくなったらポルシェセンターで充電してもよいと言ってくれましたが、さすがにそこまで乗り回す度胸はないです(苦笑))。
無充電でも400kmは走れるので代車としてなら十分すぎます。
>インテリア
乗り込んで最初に受ける印象は正にポルシェのインテリアであること。
EVらしい奇をてらったインテリアではなく、見慣れたいつものポルシェのインテリアであることが安心感を与えてくれます。
あるべきところにあるべき操作系が配置されており、初めて乗ってもナビパネルの操作以外は迷うことがなく、直感的に操作することができます。
上質なレザーを使った黒基調のインテリアは上品でカッコイイですが、派手さやEVらしさはなし。
インテリアカラーはオプションで変更できますが、他の超高級車メーカーのセダンに比べてれば奇抜さは抑え目なのがポルシェのインテリア。
使い勝手は良好で前席も後席もゆったり必要十分に広く使い易く居心地良いです。
EVらしいインテリアはメーターがフードのない全面液晶パネルになっていることでしょうか。
最新の911、992.2でも遂にアナログメーターがなくなり全面液晶メーターパネルになり話題になりましたが、それに先んじてタイカンも全面液晶メーターを備えます。
タイカンのキャラクターであればアナログメーターがないのは当然と言えますし、メーターは非常に高精細ですごく美しく、反応も良いので使いやすいです。
メーター画面の隣にあるモニタではナビを表示したり車両のコントロールを行うことができました。
走行モードは手元のハンドルで変更できますが、より詳細な車両設定を画面で行えます。
エアサスペンションによるリフト機能がとても便利。
借り物故、下回りは絶対に擦ってはいけないので少しでも不安があるところでは車高を上げて走行しました。
フロント下面は気を付けていても擦ってしまうものなのでリフト機能があるのはとても頼もしい。
タッチパネルが多めで、感度はまぁまぁでしたが指紋が付きやすい印象でした。
セダンですからリアには独立した荷室があります。
407ℓと十分な容量を備えていますので長距離旅行もバッチリ!
これだけ広いと小さな荷物だけ載せると転がってしまうのでラゲッジバッグ等は必須ですね。
タイカンターボSを走らせてみた感想
借りていた一週間の間に300kmほど走らせて、タイカンターボSの走りを堪能しました。
『ポルシェは718ケイマンベースグレードしか乗ったことがない』ということを前提の感想になります。
- 0-100km/hが2.8秒の異次元の加速性能を持っていますが、最後までアクセル全開にできませんでした。
アクセルを踏むと即座に暴力的ともいえる加速が発生しますが、停止状態からの全開加速は恐ろしくて少し踏んだだけでアクセルを離してしまいます。
シートに身体を押し付けられる加速…いや、それ以上に凄まじい加速で一瞬意識が取り残されそうになります(笑)。
少なくとも公道で試せる場所はありませんでした。
- 後輪操舵システムがあるからか、大きな車をほとんど運転したことがない私でも取り回しに困ることはなく、取り扱い易さは良好。
ポルシェらしく非常に運動性が高くキビキビスイスイと動いてくれます。
普段使いでも困ることはなさそう。
- 周りの車は718ケイマンほどには道を譲ってくれたりはしませんでした。
718ケイマンなら高速道路はもちろん、下道でも結構高頻度で前を譲ってもらえたりするのですが、タイカンはあまりポルシェと認識されていないのか譲ってもらう機会はそれほどありませんでした。
まぁ私自身、バックミラー越しでタイカンを見たことがないのでどのように見えるのか分かりませんが、やはりスポーツカーの方がオーラはあるのかもしれません。
- ポルシェ特有の半端なくガッチリ守られていると感はもちろんタイカンにもあります。
とんでもなく高い剛性感で、公道を普通に走るだけならどんなコーナーでもロールする感触を感じることはまずありません。
- EVのためアクセルを踏むと即座に得たい加速が得られ、エンジンの騒音も振動もないためとても扱いやすく快適。
車内は静かなのですが、その分タイヤからのロードノイズが耳に付くようになります。
そのため静寂とはとても言えません。
エンジン車に比べれば遥かに静かなのですが、ある程度走れるタイヤにしているのでしょうからロードノイズが相対的に目立ってしまうのは仕方がないことでしょうね。
- ポルシェらしさはあるか?
あります。
間違いなくポルシェ。
見た目も質感も、走りもポルシェそのもの。
正真正銘ポルシェの走りを堪能できるので最初のポルシェとしてタイカンを選ぶのも十分アリだと思います。
では718や911の代わりのポルシェになり得るか?
これは…ノーだと思います。
十分過ぎるほど走りが楽しいクルマではありますが、走りを楽しむポルシェのスポーツカーとしての完全な代替にはならないと思います。
例えば…エンジン車は欲しいタイミングに欲しいだけの加速を得るために、時間差を逆算してアクセルを踏みシフトを操作しますが…EVはその必要なく、ON/OFFを行うスイッチのようにアクセルを踏むと即座に最大パワーを出し入れしてくれます。
極端に表現するならゲームのようにいつでもどんなときでも毎回同じ反応を完璧に返してくれるので、ドライバーとクルマとの対話が少ないです。
速く走らせるなら、快適に走らせるならドライバーが考えてエンジンに対して都度細かく指示を出す操作が必要なエンジン車の718や911と比べると運転する楽しさという面ではEVは不利だと思います。
EVにはEVの楽しみ方がある
718や911系のポルシェの純粋なスポーツカーの代わりにはなりませんが、タイカンはグランドツーリングカーとしてはとても素晴らしい性能を持っています。
EVらしいパワフルで滑らか、そして静かな走り。
スポーツカーで旅をするとついつい走りに夢中になってしまいがちですが、タイカンくらいのクルマの方が旅を楽しむのに集中できるというもの。
それでいて走りはしっかりポルシェなので運転に退屈することはまずないと思います。
やはりタイカン一台で生活するというよりは、718や911系を所有するオーナーの普段使い・長距離移動用として所有するのが理想的な使い方かなと思います。
現状、EVはガソリン車とは得意分野が異なるので両方所有して美味しいところを使い分けるのが良いのではないでしょうか。
静かな場所へ移動して、エンジンのアイドリングなしにオーディオ、エアコン、シートヒーター等快適装備を作動させながらノートPCで作業したり読書したり。
いつでもどこでも使える快適パーソナルスペースとしてEVを使うのもよろしいのではないでしょうか。
いつか私もガソリン車のスポーツカーとコンフォートなEVセダンの複数台持ちになってみたいものです。
今回のタイカンターボSの代車生活はまたとない貴重な超高性能車の圧倒的な性能を堪能できましたが、EVの新しいカーライフを経験するという意味でも有意義な体験となりました。
コメント